1時間で1,000案のデザインを作るAIにデザイナーは勝てるのか

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デザイナー の方なら一度は作ったものを人にみせたとき「ダサい」と言われた事があるのではないでしょうか。作ったものをダサいといわれると正直イラッときますが、そこには様々な意見が隠されているので今回はダサいを分析してみます。

デザインの領域にAIが入ってくるのは時間の問題だと思っていましたが、ついにこんなサービスが出てきたようです。

プラグサービス画面
プラグサービス画面

1時間で1,000案の消費者に好まれる商品デザインを作るAIサービスの提供を開始 

開発したのは「カルビーのポテチを売上1.3倍にしたAI」で有名な株式会社プラグ。同社ではこれまでAIにデザインを評価させることにチャレンジし、サービスとして提供し着実に成果を出してきました。

この新サービスの提供開始は、デザインを生業にする多くのひとの心をざわつかせたと思います。自分もその一人です。今回はタイトルの通り、デザイナーの仕事はAIに勝てるのか、共存できるのか、淘汰されていくのか考えてみました。

デザインとは誰のためのものなのか

デザイナーという職業がこれからも続くかどうかを考えるためには、まず「デザインとは何か」を考えるところから始めた方が良いと思います。

デザインとは何か

「デザインとは何か」はもちろん一言で語れるものではありませんし、状況によっても違います。ただ、この新しく開発されたAIが行うデザインということだけで言えば明確にパッケージの「見た目」を作ることをデザインと呼んでいます。

一方でデザインという職能が見た目を作るだけでなく、ストーリーや体験など多くのものを取り扱い始めていることは言うまでもありません。

体験とストーリーを作るデザイン

例えば、トースター。2015年にバルミューダが「ザ・トースター」を作るまでトースターといえば多少の見た目や機能の差はあるにしろ、トースターと聞いてイメージするものは大きく変わりませんでした。

当時でいえば無印良品やアテハカなどのブランドが少し見た目の良い商品を作っていて、消費者は自分の好みに合った商品を選ぶことができました。

しかし、そんな状況は2015年以降から一変しました。トースターといえば1,000円台から2,3,000円で買えたものが一般的だったのに、バルミューダのトースターは20,000円以上します。

バルミューダトースター
バルミューダトースター

※バリュミューダ公式HPより掲載

しかもそのバカ高いトースターが飛ぶように売れました。見た目もカッコ良かったと思いますが、無印やアテハカが作っていたものと全く違うとも思いません。

違っていたのはそこにパンを焼くことをシンプルに追求し、このトースターで焼くととてつもなく食パンが美味しく焼けるという体験を提供したことです。

つまりバルミューダは消費者が必要としていると思っていた「かっこいいトースター」あるいは「便利なトースター」を作ったのではなく、消費者が欲しかったけど思いもつかなかった体験を作り上げたから評価されたのです。ストーリー | BALMUDA The Toaster | バルミューダ株式会社BALMUDA The Toaster(バルミューダ ザ・トースター)の開発ストーリーは、1991年のスペイン南部の町ロンwww.balmuda.com

今AIがしてくれること

2021年時点で、AIが行ってくれるのは見た目(デザイン)の評価にとどまっています。つまり無印のトースターがいいのかバルミューダの方が見た目がいいのかは傾向を出してくれる、もしくはデザイン案を出してくれるけどめちゃくちゃ美味しい食パンが焼けるトースターを作ったらどうか、と言うことはまだ提案してくれません※。
※現在デザインの生成を行ってくれるカテゴリは限られており、トースターはまだ含まれていません。

また、見た目に関しても1,000案もの膨大な案だしも可能ですが、誰に何を届けるかという判断に関しては人が行なっています。

今はデザイナーの仕事はなくならない

デザイナーという仕事を「見た目」を作ることだけに限定したとしても、AIの仕事はデザインの評価と補助の役割を担ってくれるにとどまっており、現時点で即デザイナーがいらなくなるということはないと思います。

AIを開発したプラグではデザイナーを30人以上を抱えており、さまざまなデザイン案件をおこなっていることからもわかるように、AIだけで全てのデザインが完結しないこともわかります。
こちらはパッケージデザインするAIがデザイナーの職を奪うのかに対するプラグの回答です。

――このサービスで、将来的にはデザイナーがいらなくなる?
いえ、弊社は30名のデザイナーが在籍しておりまして、このAIはデザイナーやマーケターがより大事な仕事に集中していただけるように、時間を作り出すことに価値があるサービスだと考えています。
「本質を見極めて可視化する」というデザイナーの本質的な価値・仕事はこれからもなくならないと思います。
1時間1000案! 商品パッケージを“消費者好み”にデザインするAI登場…デザイナーは必要なくなるの?

ただし、あくまでも2021年時点での話であり、特に見た目に限定していえば評価と生成のAIの精度はもっと高まっていくと思いますし、人間がデザインをこねこねしていく作業は確実に減っていくと思います。

一方でバルミューダの例に限らず、デザインの領域はどんどん広がり、見た目だけでなく体験やストーリーを作ることが仕事のメインになっていることはいうまでもありません。

デザインの意味が広義になってきている以上、過去のデザイナーの枠にとどまっている人は仕事を失うかもしれませんし、豊かな体験を創造できるデザイナーの仕事はなくならないと思います。

人だけができる仕事しか必要とされなくなるのは、おそらくデザイナーだけに限らないと思います。何が人にしかできない仕事なのかをいつも考えていたいです。