Canvaに勝てるか。2025のデザイナーの仕事を考える

平野暁人さんの「もうすぐ消滅するという人間の翻訳について」という記事を読み、デザイナーも同じだと感じたことを思い出した。

https://note.com/embed/notes/n1f05cb496913

今回は、平野さんの記事を受けて、2025年以降のデザイナーがどうやって仕事をしていくのかを考えたい。

WEBマーケのデザイン

2000年以降オンライン上のマーケティング活動が活発になり、デザインを消費するスピードが跳ね上がった。そこで消費されるデザインは、多くがWebマーケのテストのように使われていた。リアルなものを扱う広告物やプロダクトでは、高い品質を求められることもあったが、オンラインビジネスに物量が押されていったのはいうまでもない。
オンラインのマーケターは品質の高いクリエイティブよりも、早く安くテストできるものを求めるようになる。

デザインの「これでいいんじゃない」

ランサーズは、2008年にそんな世の中の流れを受けてサービスをスタートさせている。誰に発注すれば良いのかわからず、適正価格もわからなかったデザインを、簡易なコンペによって「適正と感じる」価格で発注できた。当時、多くのサービス利用者が求めていたのは「これで良いと思える」成果物だ。

会社沿革 | ランサーズ株式会社コーポレートサイト

2012年には、ココナラがサービススタートしている。現在では、デザイナーの副業場所として使われるようになり、デザインのレベルも上がってきているが、サービス開始当初はデザイナーではない人々が見よう見まねでサービス提供している人も多かった。
元々ワンコインで発注できるのが売りだったこともあり、価格感は非常に安かった。

株式会社ココナラ

ビジネスの現場において、どちらにも共通しているのは、発注者の一部は「これでいいんじゃない」というレベル感を求めていた。
デザインを戦略に取り込み、高い感度を持って仕事に取り組んでいるビジネスパーソンも当然たくさんいたが、全体としてはスピードとコストに流れていった。
これは、否定的な意味ではなく、加速するビジネスの現場では細かなデザインの仕上がりよりも、検証のスピードが優先されるのは当然だ。

デザインは自分で作る時代に

ここ数年、デザインに関わるテクノロジーの進化が著しい。デザイナーでなくても、なんとなく良いものが作れるほどデザインのアプリケーションも、それを扱う人のセンスも進化した。
Canvaは2017年に日本版がサービスをスタートしているが、コロナ禍をきっかけに普及が加速した。豊富に用意されたテンプレートを利用することで、ちょっとしたバナーやビジュアルデザインであればCanvaで作ったものは「ふつうに」ビジネスやプライベートのシーンで使用することができるクオリティを持っている。

豪デザインソフトCanva利用1億人 共同創業者に聞く – 日本経済新聞

生成AIの活用は、年々増しており進化したアプリケーションと組み合わせることで、人類総デザイナー化を強力に推進していて、Canvaの創業者メラニー・パーキンスが問題提起した「デザインすることが難しい」という問題を解決しつつある。
あと5年もすればその傾向はもっと強まるだろう。

デザインの評価は難しい

発注者がある程度のデザインで良いと考えてしまう要因の一つは、デザインを評価することの難しさがある。
何が良いデザインなのか、悪いデザインなのかはデザインの世界に入って20年以上経つが本当の正解はいまだにわからない。もちろん、そのデザインが美しく見えているかどうかを、ある程度評価することは可能だし、バナーやLP、UIの変更など定量的に測りやすい施策のデザインであれば、数字を見て評価することも可能だが、それが本当のデザインの良し悪しを評価していることにはならない。一つの施策レベルで良い成果が出たとしても、長い目で見た時に素晴らしいブランド作りに寄与していないかもしれないし、ブランドを毀損していることすらあるかもしれない。一見イマイチと思うようなデザインが人に愛されることもある。

2025年からの仕事

今まで書いてきたことを総合すると、デザイナーの未来は暗いと言わざるを得ないが、デザイナーがすぐに必要とされなくなるかといえば、そうは思わない。
デザインを評価することが難しいというのがそれをよく表している。自分でデザインすることができたとしても、本当にそれが良いものだと自信を持って人に見せることは難易度が高い。ビジネスの人とやり取りしていると、他者が作ったデザインについて「自分はデザイナーではないのでわからない」と意見を求められることがよくある。
デザイナーとしての経験に基づいて、戦略的にそれを評価することがスキルとして求められるのだ。

ただし、上記の事例をもとにデザイナーは戦略性を持つべきだなどとは言わない。そもそも良いものを作れないデザイナーに戦略性なんて求めない。結局のところ人の心を動かすようなグッとくるアウトプットを作ることが一番重要なのだ。
そう思って今年もしっかり手を動かしていこうと思う。

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