AKIRAとその装丁

AKIRA REMIXが発売されると聞いて、読み直したいと思っていたAKIRAの単行本を全巻買い直した。全巻セットで1万円程度だった。調べてみると2020年に100刷りを超えるまで販売当時のままの価格で販売されていたらしいが、改定されたそうだ。購入するときはちょっと高いかと思ったが実際に届いてみるとその凝った装丁と内容のボリューム感に感動する。

AKIRAの装丁

大友克洋の研究家 鈴木淳也さんによると、大友克洋さんが単行本だけで持ち歩いてもかっこいいものをというコンセプトに掲げて作っただけあって、そこにあるだけでアートとしての価値を感じるほど素晴らしい。

サイズと紙

まず最初に驚くのはそのサイズだろう。通常の単行本サイズではなくB5、つまりヤングマガジンと同じサイズだ。モノとして存在感が強く、細かなグラフィックまで伝わってくる。冒頭4ページはコート紙で発色の良いカラーページで、中面は通常の単行本と同じようなコミック紙が使われているが、小口が単行本ごとに別の色で小口染めされていてオブジェクト感を増している。

アキラ1巻 小口

表1と表4

表紙は作品名とナンバリング、作者名、価格、出版社名と表紙のイラストで構成されているが、全て英語で日本語はどこにも出てこない。これが日本人にとっては「漫画本」とは違う印象を与えるのだろう。また、表4は巻ごとに違う構成になっている。1巻は線数を落とした表一のグラフィックをトリミングしたもの。ハーフトーンスクリーンのグラフィックが印刷ならではの表現バリエーションを生んでいる。2巻はゲームっぽいドット絵のグラフィック。3巻は競馬のレースの様子。4巻はアキラのグラフィックがあしらわれピンボール。5巻はミヤコ婆があしらわれた熊手、6巻はグッズの集合写真。どれも凄まじい完成度だ。

アキラ1巻 裏
アキラ2巻
アキラ3巻
アキラ4巻
アキラ5巻
アキラ6巻

とくに4-6巻は個人的にとてもツボだ。ピンボールはこの撮影のためだけにつくられたものとのこと※。隅々までみてもスキのないピンボールに落とし込まれたグラフィックが秀逸。熊手は、中央にミヤコ、中央上にはSOLの模型が配されており、ところどころに基盤やケーブルがあり、このオブジェクト単体で世界観が構築されてます。グッズの集合写真については、ただの集合写真かと思いきや、小道具の新聞などはおそらくこの撮影のために作られたものだと思われる。

※造形工場より

家に置いておきたいアート

上記した通り、AKIRAの単行本は量産型のアートと言っても過言ではない完成度だ。20年ぶりぐらいに通読したが内容も20年以上前の漫画と思えないほど新鮮味を感じた。読んだことのない人はもちろん、以前持っていた人、読んだことはあるけど、今持っていない人は改めて購入して家において損はない一品だと思う。

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