2014.6.24
旅するエンサイクロペディア 望遠郷 装丁の参考書
海外旅行ガイドブックはたくさんありますが、中でも有名なのは地球の歩き方や個人旅行などでしょうか。他にもムック本や小型のarucoやことりっぷなど特に女性をターゲットにした本がたくさんでています。
そんな中1997年に廃刊してしまい忘れ去られてしまった海外旅行ガイド本の中にガリマールという出版社が発行し日本では同朋舎という出版社が翻訳して出版していた望遠郷旅行ガイドがあります。
これは旅行ガイドと呼ぶにはあまりにも博識でどちらかと言えば小さな図鑑のような趣きをもった本です。
旅行先のホテルやグルメ、ショッピングに気持ち程度の観光情報が添えられた現代のガイド本とは全く違い、現地文化に焦点をあてた作りは旅先の上辺だけの観光と触れ合いを求める生半可な旅行者にはやや思いが強すぎるような気もしますがこっちが本気で付き合えば出来るだけ、いやそれ以上のものを与えてくれる良き師のような存在たり得る本です。
今見るとたしかに書体や、海外版をそのまま日本版にした体裁の無理などがありすこし古い感じはしますが、クオリティという意味ではまったく現代の印刷物と遜色なく、むしろその都市の歴史・文化を解説しているだけに内容は古くなり様がないので今も十分使えてしまいます。
またこの本は装丁が素晴らしくて特色の金や銀を組み合わせた5色刷りのページや、ニス塗りをところどころで効果的に使い紙も5種類程度を印刷とうまく組み合わせて使っています。旅行ガイドらしくカバーや表紙も丈夫な作りになっていてよく考えられています。
いくら体裁はヨーロッパで発行しているものと同じとはいえ当時これだけ印刷の技術を盛り込んだら手間もお金もかかったことでしょう。また綴じ方も頑強に綴じてあって今1994年に作られたフィレンツェ版を中古で買って見ていますが、くたびれた感じがまったくありません。
旅行ガイドとしてだけでなく、図鑑、装丁の勉強にもなってしまう望遠鏡。本造りに興味がある人にもおすすめです。
フィレンツェ (旅する21世紀ブック―望遠郷)

関連記事

装丁と仕事 世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅
シャネルのカール・ラガーフェルドやロバート・アダムスなどの写真家、ギュンターグラスのようなノーベル賞作家まで様々な顧客からの信頼を得て数年先までスケジュールが埋まっているという出版社がドイツのstei