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2021.7.25

オリンピックの開会式はなぜあの演出だったのか 要因、規模縮小とは 決定的に欠けていたストーリー


開会式最初から最後まで見ていました。開会式がよかったのか悪かったのはさまざま感想があると思います。
開会式の演出があのような出来上がりになったのはさまざまな要因があると思います。
オリンピックの開会式に関して情報を集めて論述してみました。

オリンピックの開会式はなぜあの演出だったのか 要因、規模縮小とは



開会式の演出があのような形になったのは主に以下3つの要因がある。

要因

  1. 新型コロナウィルスによる1年延期
  2. 世間に蔓延する中止ムード
  3. 力のあるディレクターの不在

新型コロナウィルスによる1年延期

最も大きな影響があったのは新型コロナウィルスの影響による延期だ。これにより予算・演出を含めた全ての計画を見直す必要が出てきた。

世間に蔓延する中止ムード

cange.orgで行われているオリンピックの中止を求める署名は45万名以上(2021年7月25日現在)から賛同を得ている。twitter上でも開会式直前、あるいは過ぎてからもオリンピックの中止を求めるタグがついた投稿が多く見られた。
また2021年2月には組織委員会の森喜朗前会長が発言を女性蔑視と受け取られ辞任、続いて佐々木宏氏も問題は発言で辞任、さらに音楽を担当してた小山田圭吾氏、ディレクターの小林賢太郎氏と続いて過去の発言や発信を問題視され辞任した。
過去問題行為があったのは事実かもしれないが、揚げ足取りに思えるような内容もありメディアはそれを面白おかしく書き上げることで国民の賛同を得ることができている。開催よりも中止や失敗を望む意識が国民に蔓延していると思われる。

※change.org 人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます
※東京五輪、グッと増えた「中止」の声 世論調査で暴かれた空疎な首相 繰り返す「安全安心」への違和感

力のあるディレクターの不在

よく知られているように元々の開会式の統括は野村萬斎氏だったが、新型コロナウィルスの影響により規模縮小せざるをえないため交代。統括は佐々木宏氏に変わる。また2019年6月に就任が決まっていた演出家のMIKIKO氏も2020年5月に解任されている。佐々木宏氏も問題発言で辞任し統括不在の状況でプロジェクトは進行せざるをえなかった。
ただでさえ当初の演出案からコロナ禍用に変更しなければならなかったのに、全体を通してプロジェクトを推進する人間がいなかった。エグゼクティブプロデューサーには日置貴之氏が据えられた。彼のインタビューは下記を参照いただきたい。

※jbpress 東京五輪はなぜ「呪われたオリンピック」になったのか
※五輪パラ開閉会式統括、組織委日置貴之氏が共通コンセプトに込めた思いとは

縮小とはなんだったのか

規模の縮小のため交代劇が報じられたが開会式の予算は165億円となっている。2020年2月の時点で130億と言われていたが、そこから35億上がっている。12年ロンドンよりも高い予算だ。好意的に考えると実施されなかった幻の開会式の費用130億円はそのまま消え、35億円で実施するしかなかったというのが今回の開会式だったのではないだろうか。

※日本経済新聞 東京五輪の開閉会式、予算上限130億円に増額
※産経新聞 開閉会式予算35億円増の165億円に 五輪・パラ延期で演出など見直し

オリンピックの開会式はなぜあの演出だったのか 要因、規模縮小とは



費用だけの問題だったのか

ロンドンオリンピックの開会式を観た方はわかると思うが、芝生を敷き詰めた映画の世界をそのまま再現したような非常に凝ったセットが作られており、演者の数は1万人を超え、監督は映画監督のダニーボイルが担当し一貫した演出を実現していた。
コロナ禍においては演者もアシスタントやセットを作る人間など参加者を極めて制限する必要があるため、同水準の華やかなものを作ることが不可能だったのは素直に擁護できる。

なんでイマジンだったのか。決定的に欠けていたストーリー

一方でロンドンオリンピックが、全体を通したストーリーがイギリスの歴史や文化を語るもので一貫されていたのに対して日本のものは歴史や文化が語られている部分が少なく、統一されたメッセージ性がなかった、特にここが違う点だろう。
イマジンを世界の平和を願う曲として、あの場所、あのタイミングで東京オリンピックの演出の重要な一つのファクターとして出すことが本当に適切だったのか。世界の多様性を認める曲だからイマジンを使うとはあまりにも短絡的過ぎたのではないだろうか。
イマジンを流すのが「ダサい」と感じられたのは、曲が古いからでもメッセージが暑苦しいからでもなく、イマジンであれば他の国でもよかったからだ。つまりあの場所に合っていなかったのだ。

john lennon imagine

John Lennon, as pictured in an advertisement for Imagine from Billboard, 18 September 1971

日本のクリエイティブはこんなものではない

Twitterなどで「日本は終わった」「クリエイティブな力がない」など開会式を非難する声が上がっている。感想としてはとても理解できる一方で、日本にも間違いなく優秀なクリエイターはたくさんいるし、日本にはもっと良いものが作る土壌はあると確信している。
一方で、クリエイティブの成果というのはクリエイター一人では作り上げられないということも痛感させられた。政治的な牽引力、国民の支持、伝えたい強固なメッセージがあって初めてクリエイティブが生きてくる。
日本は落ちるところまで落ちたのかもしれないが、悲観することはないと思う。今後われわれが政治や活動に参加することでもっと良いものが創り上げられるはずだ。

非難することで終わらせず当事者として参加できるかどうか「日本を終わらせない」ためにはその意識が必要だろう。

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