畑を耕すようにデザインの事を考えるデザイナーのためのマガジンPeeji(ペエジ)。

2020.6.14

ローソンのPBパッケージはなぜ受け入れられていないように感じるのか


ここ数年、Twitterのユーザーが増えるとともに関わる生活者の数が多く公共性の高いと言われるデザインは常に炎上のリスクを抱えています。

オリンピック エンブレム・競技場、セブンイレブンコーヒーメーカー、サッカー日本代表ユニフォームなど多くの炎上例があります。ローソンPBの新パッケージも同様で、関わる生活者の数が多くコンビニで見るだけでもレビューできるなど参加コストも低く意見を言いやすい状況にあります。

格好の条件が揃った今回のローソンPB商品、通常であれば商品として受け入れられなけれれば買われる事がなく自浄作用が働き商品として消えていくはずが、社会の声としてパッケージデザインが糾弾されデザインした人間の私生活、人間性にまで言及していく様はかなり異様です。

背景には全ての人が受け入れやすいユニバーサルデザインでなければいけないという正義があります。

製品としての完成度はどうか

実際のところ製品のパッケージデザインの完成度はどうなのかというと、すでに多くの人が指摘するようにいくつかの指標で評価があると思います。
1. 視認性
2. 社会的な価値観の変容
3. ブランド価値醸成

視認性

最も多い意見がある視認性の悪さに関しては、ベージュの下地に細めの柔らかい明朝体、文字色が茶色なのでコントラストはかなり弱め、写真ではなくふんわりとしたイラストと全体的に優しい雰囲気には仕上がっているものの、コンビニという情報量の中で明確に情報を伝えるには弱く感じるのは否めません。せめて地色が白でスミ文字であればもう少し印象が変わったと思います。
ローソンで一通り商品を見ていてよく話題になっているNATTOやTOFUは確かにちょっとわかりにくいと思いました、それ以外だと瀬戸内レモンシリーズの商品も大福とケーキの違いがかなりわかりづらく感じました。

瀬戸内レモンシリーズ、ちょっとどちらがどっちなのかわかりづらいです

一方でよく比較される無印良品のデザインはベースは白地でMB101など太めのゴシック体、スミ文字を活用しているため文字の弱さはありません、商品も透明の中が見えるパッケージになっているものも多く写真がなくても商品の特性が伝わります。また無印は基本自分のブランド店舗のみで商品が販売されていますが、ローソンのPB品が販売されているのはナショナルブランドの派手なパッケージが乱立し、安価な陳列什器であるため商品のパッケージでブランド価値を伝えるには若干力不足だったのだと思います。

生ハムなど中身の見える商品は特に問題なさそうです。

社会的な価値観の変容

商品に求められる役割が機能を果たすという役割だけでなく、視覚的な満足感を満たすいわゆる「映え」的な新しい役割を求められるようになってきました。今回のリニューアルにはローソンが新たに取り込んでいきたいと考えるターゲット層がインスタをコアに使っている20-30代の女性に比重を置いていたと思われますが、もともとコンビニのユーザーは非常に幅広くターゲットから少し外れた層からの拒否反応は強く出たのかもしれません。

ブランド価値醸成

今回のローソンPB商品のパッケージリニューアルは、商品という最小単位のブランドのタッチポイントでブランドをどれだけ訴求できるかということが目的だったのではと推測しました。主に売り場と購入した後の自宅でのブランド価値訴求を重要視していたのだと思います。自宅に置いた時視覚がうるさくならない点は評価のポイントですが、売り場でのターゲットが老若男女であるということ、またコンビニという情報量が多い場所での訴求力という意味でいうと上手くいっている部分とあまり上手くいってない部分があったのは事実です。

味噌汁のパッケージはイラストも大きめで他ブランドがごちゃごちゃとしたデザインになっているのに対して、統一感のあるデザインで面を上手く作っていました。

様々な意見がネット上で上がり、ハフポストでの竹増社長へのインタビューが敢行されるなど当事者の意見を巻き込みながら議論が盛り上がっていますが、まだこのパッケージが成功か失敗かは正直わからないと思います。人間は慣れる動物なのである程度利用が続けば視認性が悪いと言われることは徐々に減っていくと思います。加えて竹増社長が明らかに視認性の悪い物に関しては早期に改善していくと表明しています。

SNS以前であれば買いづらいとか選びづらいという意見はユーザーアンケートを取らなければ、なかなか気がつくことができませんでした。ユーザーの意見がリアルタイムで届くのはSNSの良い部分だと思います。弱いデザインはデザインの敗北として非難されることも多いですが、わかりやすさだけが全てではなく商品が作る雰囲気まで含めデザインでしか到達できない目的だと思うのでいいバランスを見つけて行って欲しいと思います。

やってはいけないデザイン


縞模様の歴史

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