2019.9.30
利休にたずねよ 美の探求者
歴史上もっとも偉大な茶匠の一人、千利休の人間らしさを一人の女性と一つの香合を通じて描き出した小説です。
歴史上の人物と利久とのエピソードを通じて、利休がどれほど茶の湯にこだわり、美しさを追い求めていたのかを目の前で起こっていることのように浮かび上がらせています。
たくさんあるエピソードの中で利休の茶の湯の雰囲気をよく伝えているなと感じたのが徳川家康を茶の湯に招いた「木守」という話。
秀吉から謀反の嫌疑がかけられている家康が、秀吉からの命を受けた利休から茶の湯に招かれ、毒殺されるかもしれない緊張感の中で一席を過ごします。茶を喫する前の白湯からはじまり、食事、お酒を食し緊張がほぐれていく様子は、読んでいるとお腹が空いてくるほどシズル感に溢れています。
木守というタイトルの意味は、利休が持つ赤い茶碗の銘です。秋に柿を収穫するとき来年も豊かに実るようにと願いを込めて一つだけ残す柿のことを木守と呼ぶそうですが、長次郎に焼かせたいくつかの茶碗を弟子たちに先に選ばせ最後に残った茶碗に木守と名付けて自分のものとしたというから粋です。
読み進めると茶の湯と言うのがどんな意味を持って成り立っていったのか、安土桃山時代における茶の湯が持っていた政治的な意味合いなど、多面的に楽しめる一冊です。

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