2013.7.29
小冊子の装丁 CDT 葛西薫
よく仕事の合間に大きめの本屋さんに行きます。今取り掛かっている仕事の資料探しかもしくはなんとなくぶらぶらのため。ほとんどは買わずにペラペラとページをめくっていると少し満ち足りた気持ちになって、あとはフリーペーパーをもらって帰る事が多いので決していいお客さんでないのは確実ですが、そんな僕でも何回かに一回びびっとやられて衝動的にレジまで一直線な事があります。
この小冊子もびびっとやられてしまった一冊です。
この日も本屋を一周してなにげなーく帰り際に平積みコーナーを覗くと上品なピンク地と鮮やかな紺文字で一際目立つ小冊子がありました。CDTという聞き慣れないタイトルの脇に小さく「紙とインクの同人誌」とあるので、若手デザイナーの作った小冊子の類かなーと思いつつ手に取るとどうも表紙が美しい。表紙を開いてページをめくろうと本紙に手をかけた時「あっ」とさせられました。紙がとても薄いのです、表紙の上品で有りながらポップとも言える色とわりと厚めな用紙から普通に推測される紙の厚さではなく、それより1.5倍ぐらい薄い。紙が薄くないとでない滑らかなページのめくり感が絶妙で、かつ表紙の硬さとのギャップでより一層強く感じられます。
その時点でハートを完全に奪われていたのですが、よくよく中をみると執筆陣が超豪華。葛西薫さん、祖父江慎さん、浅葉克己さん、服部一成さんなど早々たるデザイナー方が書かれていて、なんでと思い奥付けを見ると東京タイプディレクターズクラブが発行する同人誌で今回が第一号。編集長に葛西薫さんを据え東京タイプディレクターズクラブの全理事に執筆してもらっているというのだからそれは豪華になるわけです。
装丁体験だけでも買う価値があると思いましたが、中も読み応えがありました。創刊号のテーマは「写真」でそれぞれ思い思いに写真にまつわるエピソードやはたまた写真の歴史まで書かれているのですが、特に北川一成さんの素材と余白の話は身につまされるものがありました。これから読む方の為に細かい内容は割愛しますがデザインをする際、素材が重要なのではなく素材を使って出来た余白が重要だというお話で、これだけだとなんだかわかり辛いですが僕がくどくど説明するより実物を読んでいただいた方がいいと思います。
ちょっと高いけどそれだけの価値はある、少なくとも僕にはありました。次号がいつ出るかわからないし出るのかさえもな感じなのでぜひ第一号をみていただきたいです。
紙とインキの同人誌 CDT1号

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日本文化とは変形の文化、文字も建築も書も元々大陸から入ってきた文化であり日本人はそれを独自の形に洗練させ日本の文化を作り上げてきました。今となっては日本の文化を代表するような茶も書も元々は大陸からやっ