畑を耕すようにデザインの事を考えるデザイナーのためのマガジンPeeji(ペエジ)。

2018.1.9

デザイン思考が世界を変える インハウスデザイナーが会社で居場所を見つけるために


2018年、あけましておめでとうございます。

今年はここ数年では最も長くお正月休みをとりまして年末から昨日までゆっくりしていたのですが、休みすぎると焦燥感に襲われてくるのが自分の良くないところで、2018年も必要とされる人材でありたいなと思いながら、お正月から本を読んで考えていた事をご紹介です。

デザイナーに求められる役割とは

2、3年ほど前からデザイナーの役割が、案件に対して視覚的アウトプットを出すグラフィックデザイナーやアートディレクターという特定の役割だけでなく、企業の戦略立案や企業形成といったレベルまでを担うようになってきていると言われています。

特にインハウスのデザイナーなどは企業内で与えられた仕事だけをこなしているだけでは、安くそれなりのクオリティのクラウドサービスとの比較において必要性を問われてしまうので、デザインのさらに上流までをフォーカスに入れて仕事をするのは不可欠になってきています。

ただ、デザイナーが企業の事業戦略にまで参加するほどの機会に恵まれるというのは、まだそこまで一般的ではありませんし、どのように経営参画していくのかをデザイナーという職能だけでひとくくりにして全ての人に求めていくというのは場合によっては酷なこともあります。

デザイナーの役割が広がってきた背景にはデザイン思考(デザインシンキング)の浸透がありますが、デザインの仕事とデザイン思考は重なっている部分もあるけど、デザインシンキングの方がより汎用的であるということを解説しているのが本書です。

デザイン思考が世界を変える

デザイン思考が世界を変える

本書は、Macintoshの初代マウスをデザインしたことでも知られるIDEOのCEO、ティムブラウンがビジネスマン向けに「デザイン思考」とは何かを解説しています。3年ぐらい前の本でやや古くて恐縮ですが読んでいて少し分かり辛い部分があり、思うところあったのでご紹介です。

わかり辛さの原因は、明白にこれがデザイン思考ですと言い切っている部分が少ないのと、ブレインストーミングやラピッドプロトタイピングなどデザイン思考から入らなくても、すでに実行されているような思考法が出てくるからだと思いますが、もっと大きな理由がある事に気がつきました。

実はデザインシンキングは机上で考える思考法を重視しているのではなく、アウトプットの出し方が重要なのでインプット重視の思考法を解説されてもわかりづらいのです。

インプットとアウトプット

「ブレインストーミング」も、本書でデザイン思考をするにあたってのインプットを得るやり方として重要視されている「洞察」「観察」「共感」も、ラピットプロトタイプを使ったミニマムアウトプットから得られるフィードバックも、すべてはそのあとにあるアウトプットを「ストーリー」として紡ぐためにあります、この本で書かれている収束的思考の部分です。

現代においてデザイン思考がもてはやされ始められた理由は、先進国の社会が成熟し、経済がシンプルな成長線を描かず、個人の発信者の台頭に、消費の多様化により今まで通用していたようなマスマーケティングが効きづらくなってきた背景があります。

「リンゴを買って売る」のではなく「リンゴを食べる経験」を売ることに価値が見出されることが多くなった社会において、何に価値があるかを見出すために適しているから、デザイン思考が社会に受け入れられているのだと思います。

つまり、何をインプットしてどのストーリー(商品やサービス)を紡ぐのか、という部分が一番デザイン思考に求められているのですが、実際にアウトプットを出すに時に求められる能力は、インプットの仕方だけでなくアウトプットにつなげる具現化力が必要です。本書ではそこには触れていないので、わかりづらいのだと思います。

デザイン思考とは実は具現化する力にあるのではというのが自分がこの本を読んでいて感じたことで、デザイナーの生きる道は多様なインプットを得る方法を模索しながら、具体的なアウトプットを作ることを存在価値として見出していくことにあり、それができないとそもそもラピッドプロトタイプにすら至れないのです。

なんだか長くなってしまいましたが、アウトプットを出し続けられる限りデザイナーとしての存在理由はあるのではと言う自分なりの結論にたどり着いたので、今年も末端のデザイナーとして何かを作りながら生きていきたいと思います。

いろいろ書きましたが、この本は、デザイナーというかクリエイティブチームが、どのような思考プロセスを経てアウトプットまで至るのかを体系的に書き下していて、その目線で読むと非常にわかりやすくおすすめです。

本年もよろしくお願いいたします。

デザイン思考が世界を変える ティム・ブラウン


縞模様の歴史

関連記事

ブランド作りの教科書

小さな会社を強くする ブランド作りの教科書 岩崎邦彦

印刷会社のリブランディングに携わっています。低価格競争の激化する中、印刷会社に求められる事や印刷会社の価値とは、と考えていた時たまたま目にした本です。

砧書体製作所 書体見本

【レビュー】Fontplus 丸明オールドの片岡朗さんと副田高行さんのいい話。

前回、フォントワークスの書体デザイナー藤田重信さんで非常に楽しませていただいたFONTPLUS DYA vol.3に行ってきました。

Fontplus

FONTPLUS DAYセミナー Vol.2 [筑紫書体 ~書体デザイナー藤田重信氏をお招きして〜]

日頃からお世話になりまくっているFontworksさんのフォントデザイナー藤田重信さんのセミナーがあるそうです。

fontplus 資料

【レビュー】Fontplus 藤田重信さんのフォントの作り方

フォントワークスのフォントデザイナー藤田重信さんが登壇されるという事でこれは行かねばと思いソフトバンクテクノロジーが開催するセミナー、Fontplusに行ってきました。

ガラスの家

ワタリウム美術館 リナ・ボ・バルディ展のアートディレクションで感じたデザインのあえてのヘタウマ

久々の休日にブラジル人建築家、リナ・ボ・バルディ展に行きそこで感じた新しいグラフィックの潮流。

オリンピックエンブレム

東京オリンピック2020 エンブレム選考3つの問題

昨年12月に〆切として行われたオリンピックのエンブレム公募ですがついに4つのエンブレムに絞り込まれたようです。改めて今回行われた一般公募の問題点が大きく3つあったことを振り返しって見ます。

財務3法

デザイナーが読むべき財務入門

自分を含めデザイナーという職業の人は割と財務や経営を自分とは別次元の話だと考えがちです。

TooLs

100 Tools 自分の道具 編集の仕事

本屋さんをブラブラしているとグルビさんの100の道具のような本が売っていました、思えば「TooLs」から始まったのか100の○○的な本をよく見る気がします。

MUJI BOOKS

リニューアル無印良品有楽町 小売のこれから

リニューアルしたからではなくたまたま化粧水がなくなってしまいどうしても買いたかったので、仕事の関係で閉店ギリギリになってしまったのですがちょこっとだけ覗いてきました

無印良品うちわ

UXとシンプルなデザイン

アプリのUIデザインをやらせてもらった時UXについても調べてみたりしました。 何しろ元は紙媒体メインでウェブはたまにお仕事をいただくぐらいの感じなのでUXについてきちんと勉強したことはありません。

書籍デザインのポスト

タイポグラフィーのポスト

お気に入りアイテムのポスト

デザイン理論のポスト