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2017.12.5

歌舞伎文字 勘亭流講座体験 勘亭流で来年の干支「戌」を書いてみた 江戸美学研究会


みなさま勘亭流という書体をご存知でしょうか、もともとは歌舞伎の看板や番付を書くときに使われ、相撲文字、寄席文字と並んで江戸文字として知られています。
モリサワ、フォントワークスの二大日本語フォントメーカーはそれぞれの勘亭流を出していますし、ダイナフォントからは3000円程度で使えるものが販売されていて、使うとなんとなくデザインした感が出るので、デザイナーでなくてちょっとチラシを作ったりしたことがある方は使ったことがあるのではないでしょうか。

なぜか使わなくなる勘亭流

不思議なことにデザイナーになるとだんだん勘亭流を使わなくなってくるのですが、それはデザイナーとしてスキルアップして書体の特徴をつかめばつかむほど、書体を使う場所を選んでいくので、勘亭流がマッチするデザインに出会うことが少なくなるのが一つの原因だと思います。
そして、もう一つの原因はフォントで作られている勘亭流は書体として使いやすくするため平坦化されていて、そのまま組んでも形の割にインパクトが出ないからではないかと思います。

歌舞伎の番付など見ていただくとわかるのですが、実際に手書きで書かれた勘亭流はその芸術的な文字作りとバランス感覚に思わずため息が出てしまうほど美しく、力強くて粋です。
そんな文字を自分でも書いてみたいなーと思っていたら、勘亭流の体験講座があるとのことで、前置き非常に長くなりましたが12月3日の日曜日に行ってきました!

今回の講座は江戸の文化を伝える活動をされている江戸美学研究会さんの主催で、講師は田中志壽さんです。

導入 3つの心得と筆運び

講義の冒頭は簡単な勘亭流の歴史と書く時の心得などを教えていただきました。特に勘亭流の文字が何故あの様にぼってりとして丸々した見た目なのかは以下3つの心得を読んでいただくとわかると思います。

先生

・文字の線を太くすることによりスキ間が少なくなり客席にスキ間が無い様に
・線を尖らせず文字に丸みを持たせ興行の無事円満を図る
・ハネル所は内側にハネお客をハネ入れる様にとの意図を含む

※田中志壽さんのプロフィールより

確かに、番付など見ると文字の懐がほとんど隙間がなく埋められていたり、尖った所が全く無いのに気がつきます。
また、尖った部分を作らないための筆運びなども教えていただきました、面白かったのは払いや跳ねなど作りの部分を習字のように書き順のとおりに書いて筆運びで作ると言うやり方をせず、書き順もその時に応じて自由に変え、時には逆から書いたりすることで勘亭流らしさを出すところです。実際にやってみないとわかりづらいですが、習字と言うよりは彫刻や木工細工を作っているのに近い感覚がありました。

先生のお手本

次は今回のお題「戌」と「福」の字を先生が書いていきます。当たり前ですがとても見事です。筆の運びや形の作り方はもちろん、勘亭流の書き方でもう一つ面白いのは修正が許されているところです。ギザギザした部分やちょっと作りが丸くない部分などを書きながら修正して完成させます。
勘亭流 先生 手本

自分でも書いてみた

ついに実戦です、最初は「一、二、三」や「口」や点など部品の書き方からスタートします。

削用筆
※書くときに使った削用筆。
墨汁を使って何かを書くなんて中学生ぶりでしょうか、筆は墨汁をたっぷり含むことができる削用筆を使います。
本当久しぶりに筆を使い文字を書きました、こんなに集中力を使って何かを書いたのは生まれて初めてかもしれません。素振りのごとく「一、二、三」と書きますがどうしても三がうまく書けない。
勘亭流 福 練習

あっという間に時間がたってきました。今回は体験の最後に「福」と「戌」のどちらかを色紙に書いて講座終了となるため、そろそろ文字の練習を始めます。僕はターゲットを戌に絞って練習開始。

勘亭流 戌 練習

どうしても戌の右の筆運びの部分がうまくいかないのですが、そうこうしているうちに終了30分前ぐらいになってしまったので意を決して色紙に書いてみます。

勘亭流 戌

こんな感じです、先生にもアドバイスをいただき微調整を加えて完成。

勘亭流 戌 完成

こちらは最終的な修正も加えたものです。なんかいびつだけどなんとか書き切りました、今見ると上の点と払いのつながりの部分とか、もっと修正すればよくできたんじゃないかと若干後悔。

というわけであっという間に3時間の講座は終わりました、なんとかやりきった感があったので仕事で大きいプロジェクトを終わらせたぐらいの充実感がありました。
講座の最後には先生のオリジナル手ぬぐいもいただき、それがめちゃカッコよくてこんなに教えていただいた上にお土産までいただき大満足です。

手ぬぐい
こちらがお土産にいただいた手ぬぐい、この文字だけでなく東京スカイツリーのイラストも先生が描かれたそうです。

江戸帖

帰り際、江戸美学研究会さんが出版されている江戸帖という手帳を見せていただきました。表紙には江戸から続く染呉服の老舗「竺仙」の浴衣の柄を使用しており、とても鮮やか。中身も江戸にまつわるコラムなど充実していて江戸好きにはたまらない一冊になっています。

江戸帖

2020年のオリンピックに向けてなんていうと白々しい感じもしますが、江戸の文化って日本が一番日本らしくあったのではと、江戸文化の一端に触れるたびに感じるのですが、ただ過去のことだけを考えるのではなく今だから作れる東京の文化を作っていくためにも、もっと江戸のことを勉強していきたいと考えさせてくれる講座でした。

歌舞伎文字勘亭流読本


縞模様の歴史

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