2014.7.14
デザインの良し悪しとはなにか。 ポール・ランド デザインの授業
デザインの善し悪しの秘密はデザイナーであれば誰でも知りたいと思うものです。
判断する指標はいくつかあります、グラフィックデザインに限った話をするともっとも当たり前というか誰もが判断するのは見たままを感じる感覚でしょう。デザインの世界にいない普通の人はほとんどが好き嫌いでデザインを判断します。
デザインをちょっと勉強している人だと文字詰めやレイアウトのバランス、配色を気にしだします、プロのデザイナーになるとそのものが持つ要求が十分に表現されているのかを気にします、そのものの要求を表現するのに必要なデザインのノウハウをもっているからです。そして論理的に人の「好き」を作ります。
IBMのロゴなどを作ったポール・ランドの「デザインの授業」という本の中でランドはデザインの良し悪しをアプリオリを通じて説明しています。アプリオリとは人間のコモンセンスのようなものだと思うのですが、多くの人が賛成する考え方という言葉で表現されています。例えば太陽の光を浴びると気持ちがいい、まだ誰も足を踏みいれていない雪景色は美しいとかそう言った感覚です。ここでもデザインの良し悪しは多くの人が賛同するかどうかで判断されると言ってます。
以前グルメ本を作った際、時間がなかったため最初打ち合わせなしで製作をすることになり、こちらとしては手探りな中なかなかのものを作ったつもりだったのですが、編集の意図とだいぶズレたものを作ってしまったらしくその後の修正が大変だった事がありました。
しかし同じ本の別のページは先方の説明が詳細だったのもあり非常に気に入っていただくことが出来ました。
この場合最初の部分は編集との共通認識がなかったため編集の「好き」を作ることが出来ませんでしたが、後の部分に関しては「好き」を共有する事が出来たのですんなり通ったのです。ただし編集と自分の間では共有出来たけどそれが読者と共有出来るかはまた別の話です。しかしプロの編集は読者の好きを心得ているため読者の好きそうなものを選ぶことが出来ます。
デザインには色々種類がありますがおそらくいいデザインである要素の一つとは好きの共有率が高いものではないでしょうか、こういうと当たり前のような気がしますが、例えば音楽や芸術だと好きな人が多いものが良い物という考え方をしない気がします。売上一位のアイドルポップは好きな人の数は多いと思われますが、それを優れた音楽だと認識する人は少ないと思います。
デザインは根本的な性質として多くの人に理解され受け入れられなければならない商業的な面を強く持っています。これはデザイン自体を趣味にする人が少ない事からも明らかです。ほとんどの人は仕事であれ趣味であれ必要に迫られてデザインをしています。
僕もデザインを職業にする前は趣味でいろいろなデザインを作っていましたが、それらはほとんどがアート色が強いものか誰かに頼まれて作るチラシなどでした。前者に関してはデザインという言葉で呼ぶのに違和感を感じます、アートなどと呼べるほどいいものではありませんがどちらかといえばそっちに近いです。
後者はやはり商業的であって作る以上ある程度の成果をもとめられます。故に良いデザインである一つの基準はやはり人に好かれることなのだと思います。
ポール・ランド、デザインの授業

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